イラスト:鈴木ハルナ


オンリーワン同好会

相談員長野が運営委員として参加するオンリーワン同好会(ボードゲーム、ソリティア)です。 よかったらのぞいてください。

Amazon販売サイト

Amazonでボードゲーム“ソリティア”を販売しています。

YAHOO! ショッピング シグネット制作部

YAHOO! ショッピングでボードゲーム“ソリティア”を販売しています。

老後の住まい

画像をクリックするとアマゾンの紹介ページへ飛びます。

中高年のダイエット

画像をクリックするとアマゾンの紹介ページへ飛びます。


Home 相談員のコラム 相談員コラム…介護を考える③──施設入居時期の見極め つづきのつづき

PostHeaderIcon 相談員コラム…介護を考える③──施設入居時期の見極め つづきのつづき


 今回は早すぎた介護の話。あまり例はないが、ご紹介する(実話を元にしているが、かなり脚色あり)。S子さんという高校の教師だった方のお話。高校卒業後、実家を離れ東京の大学へ、両親はすでに他界、田舎の兄弟とも疎遠。若いときに一度結婚したがすぐに離婚、子供はいない。60歳で退職後、数年非常勤講師をやって、65歳からは本格的年金暮らしに入る。そのころから自分の老後が心配になり、本を読んだりセミナーに出たり情報を集め出した。そこで出した結論が「頼れる身寄りが居ないから、自分がしっかりしているうちに、終の棲家を探そう。」ということだった。

 当時(数年前)はサービス付き高齢者住宅なんてなかったから、選択肢は自立型の有料老人ホーム。早速、マニュアル本通り、資料を取り寄せ、実際に自分で行って見学した。老人ホームといっても自立型なのでまわりは元気な高齢者ばかり、全室個室でありプライバシーはあるし、建物は明るく清潔、見守りや食事の提供はあるし、外出も届ければ自由で、介護が必要になったら、系列の介護付きホームに移れる。

 
もともと掃除やご飯作りが苦手なので「家事から解放されたマンションみたい」とすっかりその気になった。当時68歳で70歳前の入居は早いかなとも思ったが「早くから入れば、サークル活動で友人もできますよ。」という誘い文句にぐっときて、最終的にBという有料老人ホームに入居した。

 
そこは一時金980万円、月々16万円と有料老人ホームでは比較的安い所だった。もちろん、年金や貯蓄を考えるともう少し出せたが、元気なうちは海外旅行もしたいし、活動費に使いたいので、安いに越したことはないと考えた。荷物を整理し、ローンの終わった1LDKのマンションは賃貸に出し、身軽になってホームに入所した。

 そこでの生活は、最初から思ったのと微妙に違っていた。食事も確かに作らないで楽だけど、薄味で魚が多くワンパターン。ご飯は軟らかく、何にでもとろみがついているし、カレーは甘口のみ。刺身など生ものはまず出ないし、野菜も熱を通したものが多く、漬け物やサラダはない。香辛料や刺激物、ニンニクすら使わない料理ばかりでインパクトがない。おまけに大好きな麺類も作り置きがきかないのでほとんど出ないし、たまに出ても、箸で持ち上げられるほど固まったそばやスパゲッティだった。

 
楽しみにしていたサークルもいろいろ参加したが、外部の指導者はおざなりで、参加者も向上心がなく暇つぶしの域を出ない。ビックリしたのは、新聞を取っている人がほとんどいないこと。パソコンどころか携帯電話すらもっている人は少数派だ。S子さんはパソコンなしの生活は考えられないし、ネット通販も大好きだった。

 それでも、安心を手に入れたのだからとホームでの生活は我慢し、外に楽しみを求めた。毎日のように外出して、図書館や本屋さんに行き、帰りはスタバでゆっくり大好きなミステリーを読む生活。行きたかった海外旅行に行き、友人が誘ってくれれば、映画や小旅行にも出掛けた。外に出れば、打ち立てのそばも熱々ラーメンもエスニック料理も味わえる。老人ホームの仲間とも仲良くしたいので、出掛けるたびにあれこれ手土産を買って帰った。

 ホームにいる入居者はみんな75歳~80歳以上、冷静に考えれば文化も価値観も違う他人同士。有料老人ホームに入れる人は一般的に経済的に恵まれているが、低価格帯のホームは経済的に余裕のない人がほとんどだ。一時金で預金をはたき、月々の費用は年金ギリギリ、もしかしたら、一時金は自宅を売って工面し、月々の費用は年金では足りなくて子供たちから仕送りしてもらっている人もいただろう。金銭的余裕がない人から見たら、お金に余裕があり若くて元気に外の世界にどんどん出て行くS子さんは羨望や嫉妬の対象だ。手土産を喜ぶどころか、それをネタに暇をもてあました人たちの悪口大会になってしまったようだ。ようは浮いてしまったのだ。

 ひとり暮らしの孤独は耐えられても、集団の孤立は耐えられない。毎日食堂で顔を合わせるのも苦痛になり、友達のY美さんに相談し、そのY美さんのご紹介で私の所にご相談に来たのだ。学生時代からの友人のY美さん曰く「S子みたいに娑婆っ気のある人に老人ホームなんて無理だと思ってた」そうだ。結局、S子さんは2年たたずにそのホームを出た。

 
今では行政指導で一時金の償却は5年というのが多いが、当時は一年で半額を償却などという施設もあり、退所する場合の一時金の返金額で利用者とトラブルになるケースが多かった。S子さんの場合もすったもんだあり、2年ほどでの退所なのに半額しか戻ってこなかった。

 
虎の子の貯金が約500万円もなくなり、本人は「もう施設はこりごり」「高い勉強代だった」と言っていた。しかし、高い授業料を払ったのだから、きっちり学ばねばもったいない。そこで、この出来事をS子さん、Y美さん、私の3人で分析してみた。以下がその内容である。

●安心と自由は両天秤→ ひとり暮らしは自由だけど不安、施設の暮らしは安心だけど不自由

●終の棲家なんて青い鳥だ。どこを探してもない。→ 老後は長く、必要な手助けも変化する。介護転居もあり得る。

●今の自分に快適な住まいが良い老後の住まい。

●できるだけ施設介護の期間は短くする。

●施設はいろんな意味で同じレベルでないと居心地が悪い。

●過ちは誰にでもある。やり直せる事が大事。

●最後の最後まで選択の自由を手放さない。

 
結論としては、今回は早すぎたが、いずれ介護は必要になる。そのギリギリの時期まで、娑婆で、いろんな手助けを利用して行こうということになった。次回はS子さんの方法論と施設介護時期の見極めのポイントなどをお話しよう。


※前の記事は左の「相談員のコラム」で読めます。