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Home 相談員のコラム 相談員コラム…長生きリスク③

PostHeaderIcon 相談員コラム…長生きリスク③


 さて、今回は「長寿年金」。ずばり長生きリスクのための保険だ。長寿年金は17世紀にイタリアの銀行家のロレンツォ・トンチという人が考えたとされ、「トンチン年金」と言われる。元々は王政だったフランスが戦費を調達するために始め、1718世紀のヨーロッパに広く広まった年金制度のようだ。

 小口出資を広く募集し大量の資金を集め、出資者の年齢群によって集団を設け、各集団ごとに出資に対する利子相当額を毎年その集団の生存者で分配する。生存者というのがミソで、年齢が上がるにつれ、生存者もどんどん減るので年金額もグングン増えていく。最後は一人に莫大な年金が入る。言わば「生き残りゲーム」だ。確かにこれなら子供や孫から「おばあちゃん長生きしてね」と心から言ってもらえるかもしれない。なんか荒唐無稽な気もするが、10年ほど前からこの仕組みの年金がアメリカで大流行だそうだ。

 詳しくはニッセイ基礎研究所の基礎研レポート『米国の長寿年金』をご覧いただきたい。ベビーブーマーの高齢化、特に「長生きリスク」に対する対策として2004年に発売され、優遇税制もあって各社からいろんな商品が出され、2012年には10億ドルの売り上げだそうだ。日本にもいずれ上陸するだろう。

 米国の典型的「長寿年金」は保険金を一括で支払い、一定の長期(20年以上)に渡り運用して、超高齢の85歳になってから年金の受け取りを開始する。年金を受け取るまでに死亡したら、保険料は掛け捨て、死んだらそれ以降の年金はなし、死亡給付金もないというものだ。

 具体的には65歳時に手元の預金や退職金で2500万円もっていたとする。そのうち500万円を長寿年金に支払う。85歳から一生涯300万円の年金がもらえるが、85歳以前に死んでも死亡給付金はないというものだ。85歳になるまでに残りの2000万円を使ってしまって無一文になっても、85歳になれば公的年金+長寿年金で死ぬまでお金にこまらない。予定が立つので、本人も家族も長生きを怖れなくていいし、社会にとっても社会保障費の軽減だけでなく、死蔵しがちな高齢者のお金が世の中に出てくる可能性もある。

 問題はこれをどういう風に考えるかだ。500万円支払っても、85歳まで生きられなかったら1円も入らない究極の掛け捨て保険だ。「そんな大損の可能性がある保険なんてとんでもない」と考えるか、「自分が死んだ後の損なんてなんでもない。それより生きているうちにお金がなくなり惨めな思いはしたくない」と考えるか。私なら絶対に後者だ。

 保険の王道は死んだらもらえる生命保険。万が一、自分が死んでも残された家族の生活が困らないようにするための物だ。それに対して長寿保険は長生きしてお金に困って、子供や孫に金銭的苦労をかけたり、生活保護に頼り社会に迷惑かけたりしないための保険だ。若い時に必要な保険と老後に必要な保険は違う。たぶん、仕組みが理解されれば、米国より超高齢化社会である日本でも、年金額はグンと下がるだろうが、高齢者に必要とされ拡がるだろうと思う。

 ただ、3つほど懸念がある。ひとつは2010年に問題になった「年金詐欺事件」のように年金ほしさで家族が生きていることにしてしまうケースだ。しかし、保険会社は役所と違って保険金の支払いにシビアだから素人の偽装は通じないだろう。

 2つ目は、死なせてもらえない、無理に生かされてしまうのではという懸念。IPS細胞による移植医療が近い将来に実用化されそうだし、今でも胃瘻や人工呼吸器で意識は無くても何年も生きられる。本人が望む治療なら問題ないが、年金目当てで生かされるのは勘弁願いたい。

 3つ目はよりいっそうの医療進歩(ナノマシン、NMNなど)により、30年後の平均寿命が100歳になった場合、この長寿年金は成り立つのかという疑問。85歳までにある程度淘汰されるから成り立つ保険なので、誰もが長生きになったら保険料はべらぼうに高くなってしまうだろう。

 そうはいっても、人間はいつかは死ぬので長寿年金にも終わりはある。また、家族がお金に目が眩み、親を無理矢理生かすという非人間的行為に走るほどの大金である必要はない。

 例えば、55歳時点で長寿保険に500万円一括支払いで加入し、30年後の85歳で年金を毎月10万円程度受け取るという設計なら日本でも行けそうな気がする。500万円を30年運用する。景気変動は15年周期というので、2回の景気変動(好景気と不景気の波)を経ることになる。保険会社は運用の素人ではないし、30年間ずっと不景気とも思えないので、手堅く見積もって3%の運用は行けるだろう。そうすると、30年で500万円は1214万円になる。一方、85歳から長生きして100歳まで毎月10万円の年金を受け取ると、総額で1800万円。その間、亡くなる方もいるのでたぶん保険として充分成り立つと思う。

 もちろん、インフレなど変動要因があるので、確定年金でなく変動がいい。現在価値でほぼ毎月10万円がプラスされると考えればいい。また老後は長いので、一律支給でなくトンチン性のエッジを効かして、長生きになればなるほど年金が増額されるというのもおもしろいかもしれない。年取ると良いことが少なくなるが、自分の誕生日が楽しみなんていいと思う。

 85歳までは年金と手持ち資金の取崩しで生活し、85歳でいよいよ長寿保険が毎月10万円入ると老後はどうなるか? もし、85歳で元気だったら毎月10万円が好きに使える。旅行でも趣味でも人の為でも10万円のお小遣いはかなり使える。また、介護が必要になったら、年金と長寿年金でまかなえる施設を探す。その頃には安い公的施設は今以上に入居が難しいだろうから民間施設になるだろうが、月に10万円多ければ選択肢も広がるし、介護の環境も、4人部屋から個室などへとワンランクアップすることができる。何より、預金の取崩しと違ってお金の心配をしなくてすむ。

 民間年金保険のほとんどが年金といいながら10年間とか15年間しか受け取れない定期保険である。6070歳で受け取り始め、いよいよ介護が必要になりお金がますます必要になる85歳のころには無くなってしまう。民間の介護保険もあるが、公的介護保険連動型(要介護2とか3にならないと支給されない)であり、年々、介護認定は厳しくなっている。安心して終身で受け取ることができる年金がほぼ公的年金しかない日本で「長寿年金」は長寿社会を支える切り札なるかもしれない。

 というので、お金の心配をしない老後のために、保険会社の皆さん、「トンチン年金」期待しています。


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