相談員コラム…親が大人になった子どもを扶養するリスク
最近、生活保護の問題で子どもの親に対する扶養義務が話題となっている。しかし、今どき親に仕送りする(できる)子どもはどのくらいいるのだろう。一概には言えないが、親世代は資産も年金もある人が多い。むしろ、親族間の扶養で圧倒的に多いのは、親が子どもの面倒を見る場合だ。もちろん、未成年の子どもは最優先に扶養されなくてはならない。問題は成人した子どもを同居して養う場合だ。
周囲の状況から、こんな親子は多いだろうと何とはなく思っていたが、昨日(2012/06/15)の朝日新聞に内閣府の調査として「子どもと同居の親 卒業後も生活費援助、6割」という小さな記事が載っていた。全国の60歳以上の人2,000名ほどで、学校を卒業した子と同居する人は44%でそのうち、子どもの生活費のほとんどを親がまかなう家庭が17%、一部をまかなう家庭が39%にのぼる。また、全体の30%の人は「家計に余裕はなく、暮らし向きが心配」と答えたが、このうち62%が子の面倒をみているそうだ。
同居率の高さもさることながら、家にお金を入れるどころか、親に生活費を出してもらっている大人がこんなに多いとは…。60歳の親と言えば、子どもは25~35歳ぐらい、たぶん親の年齢を私たち現役世代の55歳(子どもは20~30歳ぐらい)まで調査範囲を広げたらもっと多いだろう。
今どきの高齢者は持ち家率86%、小さな家と細々でも年金が入るので、成人した子どもを抱えても暮らしは出来るだろう。でも、そのまま同居を続けたら、子ども世代の結婚や子育ては望めないし、いずれ親の介護要員となり年金だけで暮らす貧困家庭となる。その上、親が死んだら年金も打ち切られ、庇護され続けて中年となった子どもは世間に放り出される。
もちろん止むにやまれぬ家庭の事情があるのだろう。ずっと引きこもりだった、就職でつまずいた、パートやアルバイトで収入が少ないなどだ。私だって、息子がそういう状況になったら、とりあえず家に居させてご飯を食べさせると思う。扶養義務云々ではなく、放り出せないのだ。社会学者が「パラサイトシングル」という言葉を使っていた。確かに甘い親に依存する子どもという“なあなあ”の関係も無くはないが、子ども世代の雇用状況の厳しさを見ればそんな呑気な分析をしている場合ではないようだ。
親も子も当事者達がこの状況を決して良いとは思っていないので、なかなか表に出てこない問題だ。FPのキャッシュフロー表ではまずお目にかからない。最初から子どもがニートやフリーターになる事を想定して教育費を想定する親はいないし、学校を卒業したら子育ては終わりという前提で老後計画を組み立てる。しかし、成人した子どもの扶養という“子どもリスク”を抱えたら、そんな老後計画は絵に描いた餅だ。朝日新聞の小さな記事は、そんな想定外の家庭がこんなにもあるということを教えているのだ。
※前の記事は左の「相談員のコラム」で読めます。