相談員コラム…老後は都会で② 物価とくに住居費問題
「都会に住もう」って自分で書いていて、なんかとっても居心地が悪い。小心なので友人たちに「長野のヤツ、東京に住んでいるってだけで偉そうだ。」って思われないか心配。今日も毎日かあさんの西原さんのブログを見たら、某ホテルの1カット5,000円(ロングで25,000円)というショートケーキの写真に「皆の衆 東京は恐ろしいところだあ。来ちゃなんねえ。」というコメントが載っていた。確かにこういう東京もある。私も進学のため10代で上京した頃は、何もかも物珍しく友達と連れだってあちこち歩き回ったこともあったが、それも一時、就職すれば職場との往復だけ、ハッキリ言って東京に住んでほぼ40年になるが、東京のことは良く知らない。もちろん一個5,000円のケーキも、デパ地下の一個500円のケーキですら買わない。
実家に帰る機会が増えて、周りの人によく「スカイツリーは?」って聞かれるけど、スカイツリーどころか六本木ヒルズも未だ行ったことがない。東京23区の西外れに住んでいて、渋谷には15分で行ける。新橋や新宿に通勤していた頃は毎日通ったが、今は用事で行くだけなので年に数回しか行かない。ようするに、東京に住んでいるけど、きらびやかな場所や華やかな生活には縁のない地味で平凡な生活なのだ。こんな人間の言うことにどれほど説得力があるかわからないが、私はこのシリーズを田舎でひとり暮らす友達に「オーイ、意外に住みやすいから東京においでよ!」という気持ちで書いている。私の知っている都会は東京しかないのでつい東京の話になってしまうことはご勘弁を。さて、いよいよ今回の本題「都会の物価」。
全国物価地域差指数というデータが総務省統計局から出ている。平成25年(2013年)平均消費者物価地域差指数(51市平均=100)の総合指数(持家の帰属家賃を除く)を都道府県庁所在市別にみると、最も高いのは、横浜市の106.0で、次いで東京都区部が105.9、さいたま市が103.3、長崎市が102.4、神戸市が102.2などとなっている。 一方、最も低いのは、宮崎市の97.1で、次いで秋田市が97.3、奈良市が97.4、前橋市、福岡市及び佐賀市がいずれも97.5などとなっている。 なお、横浜市は宮崎市に比べ9.2%高くなっている。
もちろん、都会は物価が高いという結果だし、地方といっても都市部と農村部はまた違うだろう。しかし、都会と地方の物価は私たちのイメージするほど開きはない。このくらいの違いは暮らし方でどうにでもなる差だ。
衣食住ケアで言えば、衣類は都会ではサラリーマンが多いのと、デパートがあるためか若干高めだが、ユニクロやしまむら、青木など全国チェーンの量販店はどこでも同じ値段だ。食品は地方の農産物や水産物などは確かに安いが、スーパーなどで売っている食材はそんなに変わらない。もちろん介護や医療費も地方だから安いわけではない。一方、地方の方が車社会なのでガソリン代がかさむし、冠婚葬祭やお寺さんとのつきあい(月参り)など「コミュニティ経費」も馬鹿にならない。
都会と地方の物価で決定的に違うのは「住居費」だ。持ち家の場合は老後ともなれば、ローンも完済しているので、固定資産税の違いくらいだ。しかし、賃貸はおよそ地方より都会の方が1.4~1.5倍高いと言われる。単身者向け住宅で、地方の場合4万~5万円程度なのに比べ、都会では7万~8万円かかる。都会は地価が高いのでどうしても「住居費」は高くなってしまう。でも、それも考え方で、高ければ狭いところに住めばいい。住居費は広さに比例するので、1.4倍高ければ、今の70%の広さにすればいい。2倍なら半分の広さだ。
また老後の住み替えというと、先のことを考えて「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者住宅」という選択もあるが、共同生活は安心と引き替えに個人の自由度はぐっと下がる。仕事を引退してから本当に人の手を借りなくてはいけなくなるまで、15年~20年ある。持病があっても比較的元気なその間は、便利な都会の小さな住まいで、できるだけ自由に身軽に楽しく暮らしたいものだ。
狭いというと語感がよくないので、小さな住まいと私は言っているが、老後は小さな住まいが勝手がいい。出来ればマンションなど鉄骨のがっしりした建物が良いだろう。小さなマンションの良いところは
・とにかく暖かい(断熱効果が高いのでエアコンの効きもいい)
・導線が短いので何にでもすぐ手が届く
・掃除が簡単
・鍵ひとつで戸締まりでき、管理がしやすい
・高層階でもエレベーターがあるので苦にならない
・光熱費が安い
・荷物を減らさざるを得ないので、身辺整理ができる
・台風が来ても家が揺れない
・買っても借りても住み替えしやすい
といろいろあるが、引っ越して来た人に聞くと「寒くない」のが一番いいという。確かに地方の一戸建ては広くて寒い。今夏は大雨被害も多いが、マンションに住んでいると雨も気づかないほど家に守られている感がある。
幸い、都会には買うにしても、借りるにしても物件数が多い。ただ地方の庭付き一戸建てに住んでいると、今更狭いマンション住まいはしたくないという人も多く、住み替えるならファミリータイプのマンション(70㎡以上、4,000万円~5,000万円)を望むが、可能でもそれは止めた方がいい。当然、同じような広さなら地方の住まいより都会の住まいの方が断然高い。売却資金に預金を足して買えたとしても、都会への住み替えで退職金など手持ちの資金を使い果たしてしまうと、退却が出来なくなってしまう。あくまで売却資金で買えるもの、もしくは地方の自宅を貸したり、年金でまかなえる賃貸など身の丈にあった住まいを選ぶ。
ひとり暮らしや夫婦二人なら、おすすめはコンパクトマンションだ。30~50㎡の広さで、1LDKか2LDK、シングルの女性やDINKS(子供のいない共稼ぎ夫婦)向けなので、安全性が考慮されていて便利な駅そばが多く、設備も小洒落ている。新築でも2000万円~3000万円。
もうひとつのおすすめは耐震基準変更後(1981年)以降の築年数がたった管理状態のよい中古マンションだ。この頃の物件はファミリータイプでも60㎡ぐらいで、せせこましい3LDKなんてのが多いので、リフォームしてゆったり1LDKもしくは2LDK。当然、老後に住むのだからバリアフリーにして、車椅子でも生活可能にする。また、他人の手を借りることもあるだろうから家事のしやすさを考慮し、トイレも寝室の近くにする。中古リフォームは費用面だけでなく、自分仕様にカスタマイズできるのがメリットだ。
もちろん賃貸も身軽でいい。もともと江戸の昔から東京は単身者が多く、ひとり暮らしがしやすい場所だ。今なら外食やコンビニ、銭湯、コインランドリー、賃貸も昔ながらの木造アパートからワンルームマンション、UR賃貸、シェアハウス、数は少ないがコレクティブハウスなどいろんな選択肢がある。
都会と一言で言っても、マツコデラックスが出没するという新宿区、港区、千代田区、中央区などいわゆる都心や、新宿、池袋、東京、品川、渋谷などターミナル駅のある繁華街、みんながあこがれる「住みたい街ランキング」にあげられる吉祥寺や自由が丘など地方の人が知っている東京ばかりが東京じゃない。読み方もよくわからないような私鉄の駅も多く、各駅停車しか止まらないマイナーな駅なら、徒歩5~7分ほどの駅そばの便利な所も、かなり安い物件や手頃な賃貸が借りられる。基本的に仕事しない老後なら無理して都心や繁華街に住む必要はない。電車に乗ればどこにだって行けるから。都会の住環境は確かに地方に比べ大変だが、選択肢は多いし、それに勝る暮らしやすさがある。次回は都会のインフラの豊かさについてである。
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